2013年7月。
俺は風に吹かれて東広島の志和町に降り立った。
そこに至るまでにはちょっとした運命と気まぐれがあったんだ。
まあ、たいした話じゃないが暇つぶしに聞いてくれ。
俺が生まれ育ったのは香川県高松市。
穏やかな海が綺麗な素敵な街さ。
もちろん、うどんも最高だよ。
いい店を教えようか?たとえば・・・
おっと。つい脱線しちまった。
あれは19の頃。
俺はいつもの気まぐれで熊本県の南阿蘇に移り住んだ。
南阿蘇を知ってるかい?世界最大級のカルデラの中にあるんだ。
その自然の雄大さと美しさときたら・・・言葉にならないよ。
行ったことがないならすぐにでも行ったほうがいい。
温泉につかって"あか牛"と語れば日々の疲れも吹っ飛ぶぜ?
その村で俺は10年ほど、とある飲食店で働いていた。
それはそれは、楽しい日々だったよ。
リーゼントにクシを入れ、ギター片手にバンドもやった。
ごきげんなロックンロールさ。
ところがだ。ふと思ったんだ。
このままじゃダメだって。
相変わらず世の中は毎日嫌なニュースが飛び交ってる。
みんなちょっとイカれすぎだぜ!!
何が本当に大切なのか、考えようじゃないか・・・。
俺はギターを鍬(くわ)に持ち替え、畑へと足を踏み入れた。
今日からここが俺のステージだ。
まばゆいライトが、燦々(さんさん)と降り注ぐ太陽に変わっただけのことさ。
自分が食べるものは自分で育てる。
美味しいものを作る。元気になれる食べ物を。
シンプルだろ?それでいいのさ。
みんなが笑顔になればそれでいい。
とにかく俺は。
畑で勝負できるだけの知識と技術と愛を、南阿蘇である男に教わった。
https://kabashimafarm.com/
彼はとてもタフな男でね。始めはついていくのが大変だったよ。
でもすぐに、その背中を追いかけるのが楽しくなった。
うまく言葉にできないが、"生きてる”って感じがしたのさ。
俺は彼のもとで1年間、ありとあらゆることを学んだ。
そんな彼の口癖はこうだ。
「ガッツがあれば何とかなるさ」
まったくその通りだぜ。
百姓も。人生も。
そして俺は大好きだった南阿蘇を離れ、広島へとやってきた。
なぜかって?それは内緒さ。あんまり喋るとハニーに怒られるからね。
そんなわけで、2014年4月。
夜明けのジョニー農園がスタートしたのさ。
俺は今日も鼻歌まじりで畑を耕してるからさ。
いつでも待ってるぜ。
夜が明けるまで。